2022.11.20 / ITベンダー・SI事業者
営業センスは知識力 〜営業センスを磨くための基本動作〜
「あの人の服装は、流行にこびないセンスのよさがあるよね」 「あの人の選ぶ店は、いつも間違えない。本当にセンスがあるよね」 「あの人は、いつもセンスのいい文房具を持っているなぁ」
そんなセンスのいい人がいるものです。同様に営業の現場でも、次のような営業センスのいい人を見かけることがあります。
「あの人の作った提案資料はいつもセンスがいいなぁ」 「あの人のトークは、お客様を惹き付けるセンスがあるよな」 「あの人のプレゼンのセンスには、いつも惚れ惚れするよ」お金をかけて一流の高級ブランドの服装を身につけていても、センスがいいとは限りません。ユニクロのカジュアルな服を着ていてもセンスがいいと感じる人はいます。料理は美味しくてもセンスのない店はあります。流行の高級文房具を持っているからといって、センスがいいとは限らず、悪趣味と感じてしまうこともあります。 かっこいいイラストを駆使して資料を作れば、センスのいい資料ができるでしょうか。自分たちの製品やサービスをよどみなく説明できてもセンスがいいとは言えません。内容は申し分ないけれど、センスのないプレゼンをする人はいます。 こう考えて見ると、「センスがある」とは、「高級」、「内容がいい」、「有名や人気」とは、直接関係が無いように思います。 では、センスの良さを感じるのは、どういう時でしょう。例えば、「そうそう、こういう話しを聞きたかた」、「まさにこれですよ」、「ぴったりですね」という感情を、いだかせるところに、人はセンスを感じるのではないでしょうか。
その時々の状況にふさわしい機会や物語を演出できる能力センスの本質は、そんなところにあると思っています。例えば、どんなに高級なブランドの服でも、その人の体型に合わなければ、滑稽に感じます。三つ星のフレンチ・レストランに入ってもテーブルマナーが分からずに緊張感を強いられるようでは、おいしとは感じないし、会話も弾まず、店を出てほっとため息をつくことになります。「こんな店に連れてくるなんて、この人は、センスないよな」と感じられてしまうでしょう。 提案資料のセンスの良さは、中身がしっかり詰まっていることではなく、伝えたいことを的確にわかりやすく表現しているかです。トークのセンスの良さは、話しの流暢さではなく、相手の興味や関心に寄り添っているかどうかです。プレゼンのセンスの良さは、ビジュアルの美しさではなく、聴いている人たちの反応に合わせて、話しの展開をコントロールし、共感を引き出して、相手を話しに釘付けにすることです。 つまり、「ふさわしい状態を作れる能力」と言い換えてもいいでしょう。 そのためには、まずは、「ふさわしい状態」を知る必要があります。そのためのポイントは、「想像力」です。 想像するとは、つぎのようなことです。
- いまの自分は、相手からどのように見られているのだろうかを想い描くこと
- 相手の会社の状況や置かれている立場、役職を考えると、きっとこういうことに苦労しているだろうなぁ、こんなことを解決したいのだろうなぁ、と仮説を立てること
- いまの説明に、相手は首をかしげているぞ。前提の説明を省いてしまったからだろうか、それとも難しい用語を使ったからだろうか、何が原因だろう、どうすればこの状況を変えられるだろうかと方策をシミュレーションすること
学びの密度×時間「学びの密度」とは、日常の習慣に学びの機会をどれほど作れるかです。毎日、本を読む、積極的に研修や勉強会に参加する、休み時間には、SNSから流れてくる情報にアクセスし、新しい情報を収集することを心がける、といったことでしょうか。とにかく、インプットを増やすことを日常の習慣に組み込むことです。 そうして得られた「インプット知識」を、ブログに発信する、勉強会やお客様への説明資料にまとめるなどの「アウトプット知識」に転換する。その繰り返しが、学びの密度を上げることに大いに役立ちます。 「時間」とは、「続けること」と言い換えることができます。「要領よく知識力を身につけられるスタディ・ハック」というのは、私は無いと思っています。強いてあげれば、学びの密度を高められるように、毎朝1時間は「学びの時間」とし、「夜は寝る前に本を読む」というような、ルーチンを作り、それを継続することしかありません。こんなのは、ハックなんかではなく、学びの王道です。 ITをお客様に提案する営業が、人工知能と機械学習とディテープラーニングの関係が分かっていないとか、アジャイル開発とDevOpsの関係や、これを活かすにはサーバーレスやコンテナ、マイクロサービスが、大切な役割を果たすことを理解していないとすれば、「営業センス」は、発揮できません。 服装のセンスが良い人は、その類の雑誌を沢山読んでいますし、いろいろなお店にも通って、自分にふさわしい服を、沢山の選択肢から選ぶことができます。 選ぶ店のセンスがいいのも、沢山の店で食事をして、失敗も含めて沢山の経験をしているからこそ、そのうちの選りすぐりのいくつかをシチュエーション合わせて選択できるのです。 文房具も、雑誌を見て、あるいは、沢山の文房具店をまわり、使ってみて失敗して、そんな沢山の経験の上澄みが、センスとなって輝いているのです。 また、物事の本質、あるいは原理原則や定番を心得ていることもセンスの大切な要素です。例えば、リーバイスの王道と言えば、501であり、この製品が生まれた歴史的背景を知っていているからこそ、自信を持って身につけることができるわけで、その物語に共鳴した人であり、そういう生き方を自分も大切にしたいと考える人だからこそ、センスを感じるわけです。 うわべだけの新しいこととに引きずられることなく、大切にすべきこと、あるいは基本をしっかりと抑えることができるからこそ、新しいことも活かせるわけで、これもまた大切なセンスの要件です。 生まれながらのセンスの持ち主という天才的な人は、確かにいるように思います。ただ、そういう人たちも、「学びの密度×時間」で、自分のセンスに気がつき、一般の人以上に輝きが増すのだと思います。ただ、そういう人は一握りです。私も含めて多くは凡人です。凡人であっても、「学びの密度×時間」で、センスはそれなりに磨かれると思います。センスとは、そんな後天的な能力なのだと思います。 「自分には営業センスがない」のではなく、「知識力=学びの密度×時間」が不足しているだけのことです。そういう現実を真摯に受け入れることが、「営業センス」を磨くための第一歩と言えるでしょう。
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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー