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2022.03.20 / ITベンダー・SI事業者

個人の学びを組織の学びに転換する3つのステップ

ITトレンドやDXについて、講義や講演の機会が増えている。特に、ユーザー企業の方からのご相談が、コロナ禍以降、かなりの勢いで増えている。その背景には、リモートワークや非接触といった身近な日常の変化が、きっかけとなっていることは言うまでもないだろう。あわせて、これをきっかけに、ITへの係わり方を見直そうという機運も、高まっている。

その背景には、次のようなことへの苛立ちがありそうだ。

  • ITベンダーと情報システム部門に任せっきりのITが、リモートワークの足かせになったこと
  • 多大なIT投資をしているのに、現場の状況がリアルタイムに把握できずに、迅速な対応ができなかったこと
  • 改善の話はいくらでもあるが、この状況に対処するための抜本的な取り組みが、一向に進まないこと

「これからのIT戦略について、情報システム部門に相談しても、現行の改善案程度の話しか出てこない。付き合いのあるITベンダーに話しを聞いても、情シスと口裏を合わせているとしか思えない話しか出てこない。」

ユーザー企業の経営者から、こんな嘆きを聞かされたことがあるが、このような状況は、この会社だけではないだろう。

情シスが、組織として、時代の変化を学ぼうとしないというのは、言い過ぎかも知れない。しかし、現行システムを大きく変えることには、リスクを伴う。それを避けるためには、可能な限り現行を維持したい。自ずと、改善に留まる話しか出てこないし、新しいことを学ぶ必然性も生まれない。自ずと新しい変化を学ぶことに消極的になってしまう。

そんな彼らと価値観を共にするITベンダーが、経営者や事業部門から、いぶかしく思われていることは、当然と言えるだろう。

誤解がないように申し添えておくが、これは個人の学びのことではない。組織としての学びのことだ。個人として、時代の変化を学んでいる人は沢山いる。しかし、それが、組織の学びに変わらないことが問題であると申し上げている。

さて、心理学においては、「学習とは人間や動物が過去の経験によって行動様式に永続的な変化が生じ、環境に対する適応の範囲を広げていく過程」という意味で用いられる。例え、知識を得ても行動を起こさなければ、学習できない。それは、社会の変化に適応できずに、生存の危機に陥ると言うことでもある。

講義や講演の機会を頂けることは、私にとっては仕事であり、大変有り難いことだが、それを行動に移すところには関われないもどかしさがある。だからこそ、講義や講演では、行動すること、あるいは、些細なことでも始めることの大切さを力説するが、その成果を見届けられないことは、致し方ないとは言え、大変残念で仕方がない。

中には、私の話を聞いて、個人として行動を起こしてはみたものの、その経験を発言しにくい組織の風土があるとの嘆きはよく聞く。有志の勉強会に留まり、組織的行動にならないという話しも多い。また、上司から、仕事に差し障りがあるから、ほどほどにと言われることもあるという。これでは、せっかくの個人の学びが、組織の学びにならない。

組織が意志を持つことはないのだから、組織が勝手に学ぶことはない。組織の成員たる個人が学び、それが積極的に議論され、組織に取り込まれて、組織の学びになる。つまり、組織の学びには、次の3つのステップが、必要となるだろう。

  1. 知る:自分たちの常識が、どれほど世の中の非常識であるかを知る機会を得て、「現実(as is)」と「あるべき姿(to be)」とのギャップを、個人が明確に認識すること。このギャップが「課題」である。
  2. 行動する:個人の意識した「課題」を組織で議論し、組織の「課題」として共有し、課題解決の方法を明確にする。この「課題解決の方法」が「ソリューション」だ。ちなみに「ソリューション」とは、IT製品やITサービスのことではない。それが含まれることはあるが、ルールや組織・体制、習慣や暗黙の了解を変えることなども含まれる。
  3. 定着させる:そんな「ソリューション」を行動に移し、試行錯誤して、自分たちにとっての最適なやり方を見つけ出して、日常の意識や行動に埋め込む。これが、組織の学びであり、定着し行動習慣に変われば、組織の「知恵」であり、企業文化となる。

自分たちの常識と世の中の常識のギャップを知ることは、講義や講演が、手段のひとつになるだろう。しかし、組織として共有するには、経営者や管理者の積極的な関与が不可避だ。

「うちの社員は、いくら研修をしても、行動しない」

そう嘆く経営者や管理者もいるが、議論できる場や空気を作る努力を怠っている自分たちが、その原因であることに気付くべきだろう。まずは、そんな現実を受け入れて、重たい壁を取り払う方策を経営者や管理者が、考え、行動に移すことが必要だ。

「知る」機会を作ることは容易なことだ。しかし、同時に「行動する」場を作らなければ、「定着させる」ことはできない。

ユーザー企業の経営者や事業部門が、ITベンダーに期待するのは、このステップをこなす「知恵」を提供してもらうことだろう。DXの本質は、「デジタルが前提の社会に適応するためのビジネス変革」であるとすれば、そのための「知恵」こそが、「DX事業」の根源的価値となる。しかし、実践していなければ、「知恵」などないわけで、お客様の期待に応えることはかなわない。それにもかかわらず、「お客様のDXを支援します」などと、口にするのは、恥ずかしいという自覚を持つべきだ。

「DXおまかせキャンペーン」という広告が出ていた。ビジネス変革の知恵を授けてくれて、その実践まで面倒見てくれるのだろう(笑)。しかし、このジョークを、あなたは本当に笑えるのだろうか。

個人の学びを組織の学びに転換する。DXを実践するとは、それができる組織の風土を作ることから始めるべきかも知れない。

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【3月度のコンテンツを更新しました】
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・「DXと最新ITトレンドの教科書」(全71ページ)を公開しました。第1章はどなたでもダウンロードできます。
・2022年度の新入社員のための研修テキストをアップデートしました。
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DX編
【新規】自動車メーカーが自動車を売らないビジネスをはじめる理由 p.6
【新規】SONY EV市場へ参入が意味すること p.7
【新規】クラウドがもたらす競争原理の転換 p.8
【新規】競争原理の転換にむけた準備は整っているか p.9
【改訂】DXの定義 解題 p.46
【改訂】DXの定義 解説 p.47
【改訂】DXの目的 p.48
【改訂】DXと企業文化とアーキテクチャ p.102
【新規】課題解決の最善の手段はデジタルであると限らない p.233
【新規】DXは何から始めればいいのか p.234
総集編(再編集)
【改訂】総集編/ITベンダー企業向け
【改訂】総集編/ユーザー企業向け
【改訂】DXの本質
【改訂】新入社員用研修テキスト
【新規】「DXと最新ITトレンド」についての解説書
・第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
・第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
・第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
下記につきましては、変更はありません。
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