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2021.10.31 / ITベンダー・SI事業者

ITベンダー/SI事業者のDX戦略:2つのシナリオと3つの事業

「受発注型モデル」から「共創型モデル」へ、さらには「デジタル企業型モデル」へと、事業のポートフォリオを変えてゆくことが、ITベンダーの描くべきシナリオである。

先日の記事で、DXレポート2.1をこのように読み解き、詳しく解説した。

DXレポート2.1から読み解く3つの事業モデル

この前提に立って、ITベンダーの「DX戦略」を整理した。現時点で、収益の柱となっている「受発注型モデル」に続く、「共創型モデル」と「デジタル企業型モデル」の具体的なシナリオだ。

まずは、大きく「顧客の事業変革を支援」と「自社のデジタル企業へ変革」に区分できる。

前者は、お客様の事業変革、すなわちDXへの取り組みを支援するシナリオだ。これは、これまでの「受発注型モデル」で培われた信頼を土台に、「共創型モデル」として、お客様との新しい関係を築くことを目指す。

後者は、自分たちが、社会のニーズに応え、自らがデジタル・サービスを提供・運営するシナリオだ。これは、自分たちの経験やノウハウをサービス商品に昇華させ、そのサービスに対する直接の対価を受け取るもので、「デジタル企業型モデル」の実践である。

顧客の事業変革を支援

これは、「内製化支援」だ。

言うまでもないが、お客様が事業を変革するには、自らが当事者でなければうまくいかない。

  • パーパスやミッションを変える
  • いままでの仕事のやり方を変える
  • ビジネス・モデルを変える

などは、企業の文化や風土であって、外部の人間ができることは、「支援」に留まる。

ITに関わる仕事は、従来の効率化から、収益の拡大に重心が移るから、事業に関わる現場感覚と圧倒的なビジネス・スピードを求められる。そのため、事業部門が主管し、内製チームを組織することが、前提となるだろう。

だからと言って、全てを自分たちだけでこなせるわけではない。外部からの採用や社員のスキル・チェンジだけで対応することは、容易なことではないからだ。ここに、「内製化支援」のビジネス・ニーズが生まれる。

つまり、お客様の「内製チーム」の一員として、一緒になってお客様の「事業の成功」のために仕事をすることだ。つまり、お客様の要求に応えて「システムを作るための工数を提供する」のではなく、何をすべきかを一緒に考え、「事業を成功させるために技術力を提供する」ことが求められる「技術力」は、次のようなスキルになるだろう。

  • オンプレミスをクラウドへ移行するスキル
  • アジャイル開発とDevOpsでデジタル・ビジネスを高速に実装・改善するスキル
  • コンテナやマイクロ・サービスを前提としたアーキテクチャを実現するスキル
  • ビジネスをデザインするスキル
  • 議論をファシリテーションするスキル など

さらに、これら取り組みを主導するリーダシップや、お客様のメンバーにスキルを移転する人材育成のためのスキルも必要となる。

注意すべきは「組織力」ではなく「個人力」であるという点だ。従来のような工数を提供するビジネスでは、組織力が収益拡大の武器となった。しかし、技術力とは、「できるだけ少ないコードで事業目的を実現する」ことだから、圧倒的な技術力を持つ個人力が商品になる。そんな人材を、高い単価で提供し、利益率の高い事業を展開する。

自社のデジタル企業への変革

これには、「プラットフォーマー」と「サービス事業者」という2つのやり方があるだろう。

「プラットフォーマー」とは、ITサービスの実現に必要なサービス機能を提供し、自社のサービスに組み入れてもらうことで、収益を獲得しようというものだ。また、そのプラットフォームのユーザー間を連携し、ビジネス・エコシステムを築き、相互に価値を拡大することで、さらなる事業収益拡大のサイクルを回す。

また、プラットフォーム・サービスは、利用者が拡大することで、データやノウハウが蓄積されるので、これをいち早く取り込んで、圧倒的なスピードで、機能やUXの向上を図り、他社の追従を許さないことが、競争力の源泉となる。

収益は、サブスクリプションや従量課金となるだろう。また、既存の受託開発や内製化支援と組み合わせて、事業価値を拡大することもできる。

ABEJA のINSIGHT FOR RETAILや日立のLumada、シーメンスのMindSphereなど、自社の得意とする事業領域を活かしたプラットフォーム・サービスなどが参考になるだろう。

「サービス事業者」とは、自分たちの業務ノウハウや知識を活かして、直接顧客にサービスを提供するものだ。

こちらも、プラットフォーマー同様、利用者の拡大による、データやノウハウのフィードバックと、これを活かして、圧倒的なスピードで、機能とUXの向上を図り、他社の追従を許さないことが、競争力の源泉となる。

収益は、サブスクリプションや従量課金となるだろう。既存の受託開発や内製化支援の付加価値にはなりうるが、それを目指すのではなく、独立した収益事業を目指すことが大切だ。

日本ユニシスの電気自動車(EV)の充電スタンド事業やブロックチェーンを使った「非化石証書」を発行する事業、日鉄ソリューションズ(NSSOL)の文書管理サービス「Nsxpres Ⅱ」や電子契約サービス「CONTRACTHUB」などが参考になるだろう。

なお、このシナリオを実践するには、いずれに於いても、人材の育成が必要だ。これについては、Gartnerが発表している「デジタル・トランスフォーメーションの推進に必要な5つの役割」(以下、要約抜粋)を参考にするといいだろう。

 

ビジネス系プロデューサー

DXによるビジネスゴールを定義し、新たなビジネスモデルを考えたり、DXに関する企画を考えたりする役割を担う。経営層や社内外の意思決定者とのビジネス面でのコミュニケーションにも責任を持つ。

テクノロジー系プロデューサー

ビジネスゴールの達成に向けた最適なデジタルテクノロジーの特定やテクノロジーの適用によるシステム面の影響の分析、予測などを担う。経営層や社内外のエコシステムのパートナーに対する技術面のコミュニケーションにも責任を持つ。

テクノロジスト(エンジニア)

現場で実際にテクノロジーを活用する役割を担う。自動化、データサイエンス、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、AI(人工知能)などの新興領域に注目しがちだが、確実にDXを推進していくためには、通信ネットワーク、IT基盤、セキュリティ、クラウドなどの既存の領域の役割も重要である。テクノロジストもまた、全従業員が対象となる。

デザイナー

ソリューション、サービス、アプリケーションのUX(User Experience:顧客体験)をデザインする。UX面のコミュニケーション、UXとデザインに関する知識の社内普及に向けた教育なども担当する。

チェンジリーダー

デジタルテクノロジーの導入に伴う働き方(業務、意識など)のシフトの主導、変革の目的やゴールの整理、変革のコミュニケーション計画の作成、関係者全員を巻き込んだ意識と行動変容に向けた施策の計画/展開などを担う。

これら取り組みに共通する注意点は、独立して採算が維持できるように、本気で取り組むことだ。これまでも、ITベンダーは、新規事業と称して、同様のことをやってきた。しかし、その多くが、十分な成果をあげられていない。そこには、3つの理由がありそうだ。

1つは、「新規事業」を目的としていること。つまり、「新規事業」を立ち上げることが優先され、顧客や社会の課題については、新規事業に都合がいいように、後付けされるようなケースだ。本来、「新規事業」は手段であり、目的ではない。目的は、顧客や社会の課題の解決であろう。そんな本末転倒の取り組みがうまくいく道理はない。本気で新規事業を成功させたいのであれば、新規事業かどうかは棚上げし、事業のニーズ/課題と徹底して向きあうことだ。それが、結果として、新規事業になる。

2つ目は、「放課後のクラブ活動」になっていること。本業を抱えるメンバーが、「新規事業開発プロジェクト」に招集され、「君たちは優秀である。我が社の未来は君たちにかかっている。」という精神論でモチベーションを高められ、兼任でやらせているケースだ。

メンバーの業績評価は、本業だから、本業が忙しくなれば、そちらを優先するのは当然だ。また、精神論的訓示は、有り難く、嬉しくもあるが、明確なKPIもなく、予算や人材に関するスポンサーシップもない。つまり、経営サイドの本気が見えない。これでは、会社の未来を託せるような「新規事業」は無理だろう。

3つ目は、「受発注型モデル」を拡大することが目的になっていること。つまり、あくまで事業の主軸は、「受発注型モデル」であり、それを受注するための「ドアノック」や「化粧まわし」として、位置付けている場合だ。既存の「受発注型モデル」とのシナジー効果を否定するものではないが、「これで儲けなくてもいい」という前提があるので、自ずと完成度は低く、事業単独での魅力に乏しい。当然、単独での採算は見込めない。このやり方にも、経営の本気度は感じられない。

「受発注型モデル」が直ちになくなることはない。だからこそ、ここで収益を稼げられるうちに、このようなシナリオに沿って、事業の再編を図ることが、ITベンダー/SI事業者のDX戦略となるだろう。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【10月度のコンテンツを更新しました】
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研修パッケージ
・【改訂】総集編 2021年10月版
・【改訂】DX基礎編 デジタルトランスフォーメーションの本質とビジネス戦略
・【改訂】SI事業者のための最新のITトレンドとビジネス戦略 1日研修パッケージ
*トピックスとトレンドにつきましては、他の資料に統合するカタチで、メニューからは外しました。
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ビジネス戦略編・DX
【改訂】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化 p.8
【新規】アンバンドル/リバンドル/エンハンスメント p.13
【新規】アンバンドル/リバンドルとクラウド p.14
【改訂】DXとはVUCAの時代に対応するための変革 p. 19
【新規】なぜ、自律的な組織が必要か p.20
【新規】DXのメカニズム p.21
【新規】デジタル化とDXの違い p.22
【改訂】DXの公式 p.119
【新規】DX戦略の位置付け p.197
【新規】DXの戦略と戦術 p.207
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
【新規】脳と人工知能/AIの関係 p.16
ITインフラとプラットフォーム編
【改訂】サイバー・ハイジーン p.105
【新規】セキュリティの基本構成が変わる p.124
【改訂】5Gの社会実装に向けたロードマップ p.277
【新規】5Gの3つの特性とアプリケーション p.280
【改訂】ローカル5G(Private 5G) p.283
クラウド・コンピューティング編
【改訂】米国政府の動き p.35
開発と運用 編
【改訂】気付きからサービスに至る全体プロセス p.33
【新規】DXを実践するための環境 p34
下記につきましては、変更はありません。
 ITの歴史と最新のトレンド編
 サービス&アプリケーション・基本編
 サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
 クラウド・コンピューティング編
 テクノロジー・トピックス編
 ビジネス戦略編・その他

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