本文へ移動
お問い合わせ

2018.07.01 / ITベンダー・SI事業者

未来を描けない会社に優秀な人材は留まらない

「悪貨は良貨を駆逐する」

「グレシャムの法則」として有名なこの言葉は、16世紀のイギリス国王財政顧問トーマス・グレシャムが、1560年にエリザベス1世に対し「イギリスの良貨が外国に流出する原因は貨幣改悪のためである」と進言した故事に由来しています。

ひとつの社会で、額面は同じですが、素材価値(例えば金の含有量など)の異なる2種類の貨幣が同時に流通する場合は、素材価値の高い貨幣が、その素材自体の価値のためにしまい込まれてしまったり、素材として溶かされてしまったり、海外との取引のために流出したりするために、素材価値の低いほうの貨幣だけが流通するようになるということを説明したものです。

このグレシャムの法則が、組織にも適用できると説いたのが、ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンという米国の学者でした。

彼は、「ルーチンは創造性を駆逐する」と説いています。人はルーチン化された日常業務(悪貨)に追われていると、長期的で重要な計画(良貨)を考えられなくなってしまうことを説明したもので「計画のグレシャムの法則」として知られています。

彼はまた、ルーチン化された日常業務は、未来についての創造的な思考を奪うだけではなく、過去についての思考をも奪うと説いています。つまり、このルーチン化された日常業務が何の「目的」で行われているのかを忘れさせ、ただ形式として繰り返されるだけになってしまうというのです。

業務が標準化されルーチン化されることは、仕事の効率を高めることに貢献することは事実です。しかし、その業務が何の目的で始められたかが分からないままに「昔からこのやり方でやっているから」との理由だけで、黙々とその日常業務に埋没してしまっていることは、いくらでもありそうです。

時間がたてば業務を取り巻く状況は変わります。しかし、目的が忘れ去られた業務はこの変化に対応する術を持ちません。そこには、何ら改善も生まれず、イノベーションも生まれることはないのです。そして、この変化のスピードが加速しているのがいまの時代です。

先日あるSI事業者で、この「計画のグレシャムの法則」を目の当たりにしました。この会社では、「新規事業開発プロジェクト・チーム」を起ち上げ、各部門から精鋭を集めて定期的に会合を持ち検討を進めています。しかし、行ったり来たりの議論が繰り返され、また、毎週やるはずの打ち合わせも途絶えがちです。

彼らには当然のいいわけがあります。

「納期が迫られていてどうしてもそちらを優先しなければなりません。」

「トラブルがあって急遽そちらに対応しなければなりません。」

「今日は大事なお客様との会食があって、仕方がありません。」

悪貨が良貨を駆逐している典型と言えるでしょう。

日常の業務を行うことが悪いというわけではありません。しかし、人月仕事、多重請負という、将来には破堤するであろう、あるいは、十分な収益を確保できなくなるであろう収益構造からの脱却を目指そうというのがこのプロジェクトの目的であるとすれば、これは日常業務以上に重要なことではないのでしょうか。

「そんなことはありません。工数も稼働率も上がっています。」

それは自らの努力の成果なのでしょうか。景気の動向や特需、あるいは、たまたまお付き合いしていたお客様の勢いがよかっただけかもしれません。つまり、それは成り行きの業績であり、自分たちの戦略や努力の成果だと言えるのでしょうか。

例えば、次のような質問を自分たちに問いかけてみてください。

  • これまでとは違う新しい顧客からの仕事は増えているか?
  • これまでとは違う技術や業務へと仕事の領域は拡大しているか?
  • こちらから提案を仕掛けているか、それは受け入れられているか?

これにイエスと応えられないとすれば、まさに自分で自分の未来を描けないということです。そして、次のような本音を漏らすことになるのです。

「依頼された仕事はしっかりとこなすが、こちらから仕掛けて仕事を獲ってくることができません。」

「何を解決するかを人間が決めれば、あとは機械が答えを出してくれる」、やがてそんな時代が来ることになるでしょう。それは遠い将来ではありません。

クラウドや自動化の領域はどんどんと拡大しています。単純作業はRPAに置き換えられ、超高速開発やAIの進化がコードの生成を劇的に効率化してくれます。つまり、「手順は決まっている×工数がかかる」仕事は機械に置き換えられようとしているのです。そうなれば、いまの工数需要を生みだしている仕事は減ってゆくことは容易に想像がつきます。

このような仕組みを作るエンジニアの需要は益々増えてゆくでしょう。また、このような仕組みを駆使し何を解決するかをお客様とともに見つけ出し、使いこなしてゆくエンジニアも必要です。一方で、依頼されたことをその通り行う工数としての労働力需要を減らすことになるのです。

このような現実があるにもかかわらず、「新規事業開発プロジェクト・チーム」なるものは、放課後のクラブ活動になっていることも少なくありません。本業とは別に「余力」で放課後に集まり、さあどうしようかと議論するわけです。経営者からかは「おまえは優秀だからこのプロジェクトに指名した」とおだてられ、「3年後に10億円のビジネス」という根拠なき精神論としての達成目標を提示されるだけです。

事業予算や事業部門からのスポンサーシップはなく、孤立無援の取り組みになっています。ここでの取り組みは自分の業績評価とは無縁です。当然、自分の業績評価に関わる本業が優先され、放課後のクラブ活動は後回しにされてしまいます。

経営者に覚悟ないので、現場も覚悟ができません。その結果、新規事業開発プロジェクトは、いつまで経っても成果をあげることができません。そして、気がつけばそんな取り組みがあったという記憶だけが残るだけです。

自分の未来を描けない会社に優秀な人材は留まりません。彼らは自分の成長のチャンスを求めて、転職のチャンスを探し始めます。しかし、行き場のない残された人たちは、会社への不満を募らせ、「どうせこの会社はダメだから」とささやき、新しいコトに消極的になってゆきます。そういう人たちに危機感を煽り、あるべき論を説教し、叱咤激励したところで、動くわけがありません。

もし、そんな悪循環があるとすれば、これはかなり深刻な事態です。

「昔から同じような議論はされてきたけど、結局はなんとかなってきました。だから、これからもなんとかなりますよ。」

これまでのやり方が未来永劫続いてくれるのであれば、それは幸運なことです。しかし、そんな楽観はもはや通用しなくなろうとしています。これまでやってきたことの慣性に押され「まだ何とかなる」と考えているとすれば、まさにその意識こそ、「計画のグレシャムの法則」に陥っている証拠です。

大事を小事の犠牲にしてはならない

ゲーテの言葉にもあるように、この原則は今も昔も変わりません。

ものごとの優先順位を決めるとき、『緊急』よりも『重要』を優先しなさい

スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」の第3の習慣に書かれている言葉です。

果たして、みなさんの会社は、「計画のグレシャムの法則」に陥ってはいないでしょうか。

少し厳しく、そして冷静に現実を問い直しては如何でしょう。

【募集開始】ビジネス・リーダーのためのデジタル戦略塾

スクリーンショット 2018-06-29 7.01.08.png

  • 8月2日(木) 第1回 最新のITトレンドとこれからのビジネス戦略
  • 8月29日(水) 第2回 ビジネスを戦略的に動かす実践データサイエンス
  • 9月14日(金) 第3回 未来創造デザインによる新規事業の創出
  • 10月3日(水) 第4回 デジタルサービスの機敏な提供ーVeriSM

対象者は次のような方です。

SI事業者やITベンダーではない事業会社のリーダーや管理職、部門長、経営者(ITやデジタル・テクノロジーについての前提知識は不要)

  • 事業企画や経営企画にかかわっている
  • 新規事業開発にかかわっている
  • 情報システム部門で企画や戦略に関わっている

次のような課題をお持ちの皆さん

  • 最新のIT知識や実践で活かすためのノウハウを手に入れたい。
  • デジタル戦略の実践でリーダーシップを発揮したい。
  • 事業計画にデジタル戦略を織り込みたい。

もはやデジタルを味方にしなければ生き残れない時代です。しかし、加速度を増すテクノロジーの進化についてゆくことは大変なことです。また、それを実践に活かすとなるさらに高いハードルが待ち受けています。

そんな課題を克服し、自分たちのデジタル戦略を前進させたいと考えている方に、テクノロジーについての最新の知識をわかりやすく伝え、実践のためのノウハウを学んで頂きます。

SI事業者やITベンダーの皆さんへ

お客様のITに関わる予算の7割は、情シス部門以外の部門が意志決定に関与しています。ここに営業力を直接的に行使できれば、営業目標の達成にも大いに貢献できます。「デジタル戦略塾」は、この取り組みを支援するものです。

いま、お客様の事業部門は、自らの事業の差別化を図り競争力を強化するためにITを積極的に活用していこうとしています。「攻めのIT」や「ビジネスのデジタル化」、あるいは、「デジタル・トランスフォーメーション」といった言葉が、注目されているのはそのような背景があるからです。一方で、彼らはITについての知識は乏しく、それを活かす方法を知りません。

ITを活用して事業の競争力を高めたいが、それを実践に活かす知識もノウハウもない

このギャップを埋めることに積極的に貢献できれば、事業部門との信頼関係を強固にすることができます。そうすればその先にビジネスのきっかけを見つけることができるようになるはずです。

情報システム部門の皆さんへ

情報システム部門の中には、このような事業部門の取り組みの蚊帳の外に置かれているところもあるようです。「攻めのIT」は事業部門の主導の下で行われ、自らの存在意義を問われています。

「デジタル戦略塾」を事業部門にご紹介いただくことは、「攻めのIT」への取り組みにおける自分たちの存在意義を、事業部門や経営者にアピールする有効な手立てとなります。また、ご自身も一緒にご参加いただき、「攻めのIT」への取り組みを二人三脚で取り組むための知識とノウハウを共有して頂くこともできます。

  • AIやIoT、クラウドやアジャイル開発などの最新のテクノロジー
  • ビジネスをデータで理解するためのデータサイエンス
  • ビジネスにイノベーションをもたらすデザイン思考
  • 新しいビジネスをいち早く実践の現場に展開するためのVeriSM

digist-juku_banner_300x90.png

ご参加ならびにご紹介をいただければ幸いです。

【募集開始】新入社員ための最新ITトレンド研修

freshman1day.png

IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。デジタル・トランスフォーメーションの到来は、これからのITビジネスの未来を大きく変えてしまうでしょう。

しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることはありません。

そんな彼らに「ITトレンドの最新の常識」と「ITビジネスに関わることの意義や楽しさ」についてわかりやすく伝え、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと「新入社員ための最新ITトレンド研修」を昨年よりスタートさせました。今年も7月17日(火)と8月20日(月)に開催することにしました。

参加費も1日研修で1万円に設定しました。この金額ならば、会社が費用を出してくれなくても、志さえあれば自腹で支払えるだろうと考えたからです。

社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはなりません。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくるのではないでしょうか。

  • ITって凄い
  • ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
  • この業界に入って本当に良かった

この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標です。

よろしければ、御社の新入社員にもご参加いただければと願っております。

詳しくは、こちらをご覧下さい。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

LiBRA 5月度版リリース====================

  • SI事業者/ITベンダーのための「デジタル・トランスフォーメーションの教科書」をリリース
  • 「ITソリューション塾・第27期」の最新コンテンツ
  • その他、コンテンツを追加

====================================

【新規掲載】SI事業者/ITベンダーのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書

  • 教科書 全109ページ 
  • PDF版
  • プレゼンテーション 全38ページ ロイヤリティフリー

====================================
「ITソリューション塾・第27期」の最新コンテンツを追加
メインテーマ

 ITトレンドの読み解き方とクラウドの本質
 ソフトウェア化するインフラと仮想化
 クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
 IoT(モノのインターネット)
 AI(人工知能)
 データベース
 ストレージ
 これからのアプリケーション開発と運用
 これからのビジネス戦略【新規】
知っておきたいトレンド
 ブロックチェーン
 量子コンピュータ

====================================
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】伝統的なやり方とIoTの違い p.19
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】人間にしかできないコト・機械にもできること p.100
インフラ&プラットフォーム編
【新規】仮想化とは何か p.68
【新規】仮想化の役割 p.70
【新規】サイバー・セキュリティ対策とは何か p.125
【新規】脆弱性対策 p.127
クラウド・コンピューティング編
【新規】コンピューターの構成と種類 p.6
【新規】「クラウド・コンピューティング」という名前の由来 p.17
【新規】クラウドがもたらすビジネス価値 p.26

ブログ記事一覧へ